舞台は前作から10年が過ぎようとしているニュージャージー、ダンテ(ブライアン・オハローラン)とランドル(ジェフ・アンダーソン)が勤めていたコンビニは火事で閉店。しかたなく二人は近所のファスト・フード・チェーンでハンバーガー屋の店員として働いていた。ダンテはお金持ちのお嬢様との結婚式を間近に控えて、いよいよ30歳を超えてのデットエンドのバイト生活にもおさらば。一方のランドルは相変わらず将来への展望も人生設計にも無縁だった。


店の外には、ダンテとランドルと共に引っ越したように、ジェイ(ジェイソン・ミューズ )サイレント・ボブ(ケヴィン・スミス)のコンビが何をするでもなくブラブラと時間をつぶす。


バーガー屋の雇われ店長ベッキー(ロザリオ・ドーソン)は、ダンテの結婚を祝福しつつも、頼りない他の店員達を引っ張ってきた真面目なダンテの退職を寂しく思う。別れを間近に控え、お互い明るく振舞うダンテとベッキーだったのだが...


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前作「クラークス 」の続編で、もちろん脚本と演出はケヴィン・スミス監督。彼の一連の映画、「チェイシング・エイミー 」、「ドグマ 」、「ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲 」などと同じくお互いに舞台設定を共有していて、その流れでカメオとしてベン・アフレックやジェイソン・リーなどもちらっと顔を出したりします。


場所や時間の飛躍が少なく、舞台演劇みたいな構成は前作から踏襲されていて、相変わらず台詞の密度の濃さと、キャラクターの作りこみで見せる演出で、飽きさせずに最後まで見られる勢いがあります。


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前作では「どのスターウォーズが一番いい出来か?」という映画議論に耳を奪われましたが、今回の目玉は「スターウォーズ・ファン対ロード・オブ・ザ・リング・ファンの言い争い」と「差別用語」論争。かなりドぎつい場面もあって、あんまりだと呆れた某評論家は試写会から途中退席したらしい(しかも30年間のキャリアで初めてだそうな)。どんなヒドい事を言っているのか、興味がある人は「ここ 」のようなリンクもありますので参考までに: (リンク切れ無保証。英語台詞ママ字幕無しなので自信のある方のみどうぞ)


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ちなみにこの映画で使われている「ポーチ モンキー」とという黒人蔑称の差別用語、自分は今まで聞いた事がありませんでした(割れたビール瓶=「ニガー・ナイフ」というのも初めて)。職場の知り合いによると、相当ヤバい差別用語らしい。昼食時にそんな事を聞いていたら、そこから話は広がり、例えば「ショート・バス」というのが知恵遅れを馬鹿にする隠語だと聞き(いじめられないように小型バスで別に送迎するから)、なるほど「ダム&ダマー2 」でめちゃくちゃ小さいスクール・バスが画面に出ただけで客が笑っていたのはそういう意味だったか、などと改めて気づいたりしました。


物語のセットアップから落ちまで、脚本の構成方法から、ダンスシーンの使い方まで含めて、映画を映画として成立させる文法を意識しつつ、基本をしっかり抑えて自由に遊んだケヴィン監督の上手さが光った作品でした。予算は5億円ポッキリ。小作品はこうあるべし、という見本のような佳作。お勧めです。


IMDb: Clerks II
Official Site: The Weinstein Company

Clerks II