明るく活発なヴィオラ(アマンダ・バインズ)は女子サッカー・チームで活躍するストライカー。ところが「どうせ女子チームは女の子の遊び」とチームのグランド使用権が一方的に取り上げられてしまう。聞く耳を持たないコーチやボーイフレンドを見返して自分の実力を証明するため、ロンドンへバンド修行に短期旅行するのに転校そうそうサボりを決め込む兄のセバスチャンになりすまし、男装し転入生を装って別の学校へ。
ルームメイトになったハンサムなデュークに心がトキメクものの、変装を必死に隠すドタバタからすっかり変人扱い。兄を一方的に追いまわすストーカー女から姿を隠しつつ、レギュラーの座を狙い必死に練習に励むヴィオラだったが…


シェイクスピアの「十二夜」を女の子向けスポーツ・ラブコメに仕立て直した作品で演出はTV畑でキャリアを積んだアンディ・フィックマン。主演のアマンダ・バインズはお子様向けケーブルTVチャンネル Nickelodeon Network の主演番組でローティーンから絶大な人気を誇るアイドルですが、そろそろターゲット・オーディエンスをローティーンからハイティーンの中間くらいにシフトしつつある、という事なんでしょう。日本では「ロボッツ 」での声優や「ロイヤル・セブンティーン 」など、中規模映画への出演で顔が一般にも徐々に知られ始めた所でしょうか?


サッカーの試合など全般にリアリティからは程遠く、お約束の連続なわけですが、これはこれでそれなりにちゃんと機能していたと思います。ちょっぴりフェミニズムの香りも入れつつ、ロマンチックな恋愛ドラマをコミカルに描き、ドタバタなアクションもあり、といろんな要素を入れつつ観客に向けたメッセージはブレず、演出のバランスの取り方はなかなか絶妙。
過去、シェイクスピアの戯曲を焼き直したティーン向け青春映画は数多く量産されていて、それらと比べると本作はずば抜けて水準が高いわけでも低いわけでもなし、というくらいの出来だと思います(自分の密かなお気に入りは「じゃじゃ馬ならし」をベースにしたジュリア・スタイルズとヒース・レジャーの「恋のからさわぎ 」だったりします)


なんど焼き直されても魅力を感じる古典の強さを感じると同時に、この手のお手軽映画をパターンながらそれなりにちゃんと作りこんでくるハリウッドのスタジオ・システムのいい面と悪い面の両方を見たような気がしました。製作規模は20億、米国での興行収入は34億と、収支は合わせたみたいです。わざわざ映画館で見たいという人も多くはないんでしょうが、万人向けで誰が見ても大外れはしない安定感はあったと思います。


IMDb: She's the Man
Official Site: DreamWorks

SheIsTheMan