平和だった森の小さな町では、近頃ベーカリーやお菓子屋での盗難事件が多発していた。犯人は秘伝のレシピを盗みだし、結果多くの店は倒産へ追い込まれた。そんな中レッド(アン・ハサウェイ)は、森の外れにあるおばあちゃん(グレン・クローズ)の家へ秘伝のレシピが詰まったメモ帳を届けに行く事になった。絶対安全なはずのロープウェイから事故で落下してしまい、道もない森の真ん中に迷い込んだレッドの前にさっそく悪いオオカミが立ちふさがるのだが…


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ご存知「赤頭巾ちゃん」をベースにしながら、コンテンポラリでポップに味付けされた、次世代 3D アニメ。静止画からはちょっと癖のある造形のキャラクター達ですが、画面で動くとなかなか味があっていい感じ。


赤頭巾ちゃんの声を宛てるのは、「プリティ・プリンセス 」、「Ella Enchanted 」(←もしかして日本未公開?)、「ブロークバック・マウンテン 」と順調にキャリアを積み、もうすぐメリル・ストリープと競演した「The Devil Wears Prad 」も公開になる注目のアン・ハサウェイ。この他声優キャストの中にはアンソニー・アンダーソン、ジム・ベルーシなどの名前も。


80分というタイトに刻まれた編集に載せテンポよくイベントを消化いて行く進行スタイル。皮肉と当てこすりに満ちた作風+ポップカルチャーへの多大な依存を見ると、幼いお子様連れの若カップルというよりは、むしろティーンエイジャーを狙った作品のように見えます。米国での広告宣伝経路が今一つクリアでなくこれはインディなのかスタジオ作品なのか? よく判らないママに観劇に望んだのですが、あとで調べてみたら、配給はディズニー支配の強まったミラマックスから離れハーヴェイ&ボブ・ウェインスティンが新たに起こした新興の The Weinstein Company でした。なるほど、どうりで童話ベースのアニメで居ながらお子様向けでないし、またメインストリームの宣伝チャンネルも使わない(使えない)わけです。


困難をかわしつつ、おばあちゃんの家にたどり着いてみると、彼女は縛られ押入れの中に… と、一見トラディショナルな物語を踏襲しているようでいて、そこから急反転するストーリー・テリングのスタイルは斬新。各登場人物の証言が微妙にズレつつかみ合って行く「羅生門」チックな構成に「おぉっ」と驚かされ(いや配給会社に敬意を表してタランティーノ風、と書くべきか)、華麗に動くアクションで手に汗を握り、絶妙な選曲センスのサントラに心が弾む、と文句無しの観劇体験でした。まぁ広告がしょぼく「どうせダメだろう」と期待値がえらく低かったせいもあるとは思いますが。


予算は今時びっくりの15億(5年前の段階でハリウッドの平均制作費は40億を超えてます)にもかかわらず、全米興行で51億以上の集客を記録したこの作品、この手のアニメ作品にあまり興味のない人にも、ぜひだまされたと思って映画館まで足を運んでもらいたい秀作だと思いました。お気に入りです。


IMDb: Hoodwinked
Official Site: The Weinstein Company

Hoodwinked