シカゴの勤務医ケイト(サンドラ・ブロック)は、郊外の湖の畔に美しくひっそりと佇むレイク・ハウスから都心の新築高層アパートに引っ越そうとしていた。次の住人に宛てに「転居届けにも関わらずもし郵便が誤配送されたら新居まで転送してほしい」旨の手紙を書き、空き家となった郵便受けに入れた。だが、しばらく経って相変わらず無人のレイクハウスを訪れ郵便受けを開けてみると、そこにはアレックス(キアヌ・リーヴス)という男からの返事が。アレックスはこの家は今自分がすんでいて、手紙の内容がよくわからないと書いている。しらばく郵便受けを通じて文通しているうちに判ったのは、ケイトが引っ越してくる直前までアレックスはおなじレイク・ハウスに住んでおり、二人はなぜか2年間の時を隔てて手紙をやり取りしているという事。不思議な郵便受けを通じ、二人の心は通じ合ったかに思えたのだが…



ザ・リング 」や「THE JUON/呪怨 」など日本映画のハリウッド・リメークで大成功を収めたプロデューサ、ダグ・デイヴィソンとロイ・リーが、こんどは韓国純愛映画も、という事で、5年ほど前に公開された韓国映画「イルマーレ」が原作にし、「プルーフ・オブ・マイ・ライフ 」のデヴィッド・オーバーンが脚色した、ファンタジー/ミステリー・ラブロマンス。演出を担当したのは、「Valentin 」(←なかなか良い感じでした)の米国公開で注目を浴びたアルゼンチン監督のアレハンドロ・アグレスティ監督。


今更言うまでもないですが、主演の二人は、共にトップ・スターに昇らせた大ヒットアクション「スピード 」で競演した間柄。続編の「スピード2 」は何故か彼氏がジェイソン・パトリックに挿げ替えられていましたが、噂に聞く所によると、企画の段階でサンドラもキアヌもヤバさを感じて逃げ出しにかかっていたらしい。結局サンドラは自分が暖めてきた企画「微笑みをもう一度 」(←自らプロデュース&主演)の製作とバーターで主演を引き受けたそうですが、結果はご存知の通り。


そんなこんなで、スピード以来初競演となったのが本作。話の設定上、サンドラとキアヌはほとんど一緒に写る場面がないわけですが、手紙の朗読を録音するサウンド・スタジオでよく一緒になって話が弾んだらしい。てっきり初めからこの二人ありきの企画なのかと思っていたら、当初アレックスはジョン・キューザックを想定していたらしい。その他の目だった出演者は「砂と霧の家 」のショーレ・アグダシュルーや、相変わらずダンディな爺さんという役どころでクリストファー・プラマーなど。


トレイラー (予告編)はしっとりしていて、かなり期待していたのですが、どうにもネットで伝わってくる前評判は芳しくない。オリジナルの韓国映画を観たという韓国人の同僚に原典の出来を聞いても「本国でもそれほどヒットしたわけでもなく、出来も悪くはないけど普通以上でもなし。女の人は好きそうな話だったけどね」となんだかツレない。そんなわけで期待値をぐ~と下げて観劇に望んで、結局それが幸いしたのか、恐れていたほどつまらなくはないように思いました。


劇中、湖畔の水上にひっそりと立つガラス張りの家の中で、アレックスが吐く「自然に囲まれていて、でも見るだけで触ることはできない」みたいな意味深の台詞も多く、いく層かにまたがるメタファーがちりばめられた脚本は、なかなか手が込んでいたと思います。
ただしタイムトラベル物のありがちな矛盾をかわしつつメロドラマを成立させるために作話上あれこれギミックが多く、仕掛けを説明するだけでいっぱいいっぱいな感じも。映画を観ている最中、ただただ筋を追っているだけで、キャラクターに感情移入している暇はあまり無い。キアヌとサンドラ、どっちに軸足を置いているのかもよくわかんないし。
まぁ文通を絵に起こして、二人が同時に同じフレームになかなか入らない、というのは確かに難しいトリッキーな設定ではありますが、「ユー・ガット・メール 」という先例もあるし、これだけ強いキャスティングなんだから、とちょっと不満に思わなくもなかったです。104分の尺で、ちと長いな、と感じるのは、編集にもあと一工夫足りない所があるのかも。


ちなみにあの水上レイクハウス、えらくカッコ良く美しくてて、あんな所に住めたらいいな、と一瞬ちらっと憧れたのですが、サンドラ・ブロックによると下水が通ってないので家の中にトイレが無いらしい。映画の撮影時には湖畔にぽつぽつと移動式簡易トイレが立っていたそうですが、建築的な美しさと住みやすさは両立しづらい、という事なのかもしれません。うむ。


米国では公開第1週 14 億円強の興行収入を上げ、ボックス・オフィス・ランキングには4位で登場。最近日米の公開時差がえらく縮んできたワーナーの配給なので、もっと早いのかと思いきや、日本では2006年秋の公開予定だそうです。


IMDb: The Lake House
Official Site: Warner Bros.


The Lake House