テッド(ウィル・フェレル)はニューヨーク郊外の私設博物館の学芸員。一昔は活気があった博物館も今は古ぼけ閉鎖の危機に面していた。館長の息子(デヴィッド・クロス)は、儲けの出ない施設をつぶし駐車場にしたがっていたが、テッドはアフリカの森林奥地にあるという伝説の巨大猿の遺跡を発見して展示の目玉にすることを館長(ディック・ヴァン・ダイク)に提案。
なぜかテッド自身が探検隊をリードすることになるが、遺跡は発見できず代わりに見つかったのは手の平サイズの猿の彫り物。ところが連絡につかった携帯写メールでサイズを勘違いした館長は大喜びで帰国を命じる。テッドは失意のうちにNYへと戻るのだが、その船には好奇心でいっぱいのいたずら好きな小猿が乗り込んでいた…


マーガレット・レイの物語に夫ハンス・アウグスト(H・A)・レイが絵をつけた、絵本「ひとまねこざる」シリーズの映画化。演出はマシュー・オキャラハン。
この映画、必ずしも原作本に忠実なストーリー展開ではありませんが、所々に絵本から取られた題材、たとえばたくさんの風船で空を飛んだり、アパートにペンキで落書きしたり、が挿入されています。その脚本を手がけたのは「スペースカウボーイ 」で知られるケン・カウフマン。しっかり練られた良い出来だと思います。


"黄色い帽子のおじさん"を演じるのは、SNL の体当たり芸風で知られるウィル・フェレルで、最近空回りの演技(「奥様は魔女 」他)も目に付きますが、本作では普通に困ったおじさんを自然に被せていて、なかなかいい感じです。
博物館に見学にくる小学生の引率の先生という役でドリュー・バリモア嬢。ウィルとかけあいが自然でチャーミングでした。この他にジョーン・プロウライトやユージン・レヴィらの名前が声優として出ています。


原作の第1作目が発表されたのは1941年(戦争の前!)で、なんとその65年後にアニメーション映画化。マーガレット・レイによれば原典の絵本は1冊に1年以上かけて推敲を繰り返しながら時間をかけゆっくりゆっくり書かれたそうですが、この映画も企画から配給まで10年間かかったそうな。

一見普通の手書きアニメで背景はしっかりCG、というのは今時の2次元アニメの定番ですが、シンプルな中に普遍性が潜む原作の魅力を壊さず、素直に1時間半弱の作品に仕上げていた点が非常に良かったと思いました。


原作の魅力は、ジョージが「猿だから」と言う理由でイタズラをしまくって、その後やっぱり「猿だから」という理由で許される、という点につきると思うのです。子供は当然自分をジョージに投影して、お子様固有の破壊衝動を満たしている、とそんな風に理解しているのですが、改めて考えるに最近のディズニー系お子様映画にもかならず「お痛」するシーンが出てきます(泥棒に肉体系の痛いイタズラをしかけたり、食べ物を投げあったりとか)。このお子様受けの鉄板公式が50年以上前から絵本でフォーマライズされていたのだと思うと、なんか不思議な気分。


目を驚かさせる最新のスタイリッシュに尖ったアニメもたしかに楽しいですが、刺激の強さのインフレに溺れた身には、時にこのような素朴でストレート、素直で簡単な面白みもいいもんだなぁ、と改めて思う今日この頃です(単に歳を取った、という事なのかもしれませんけど)
いや実際、昨今ボックスオフィスを沸かせるエッヂーな 3D アニメでモダン・クラシックと成り得る作品はそうそう多くないと思ったりもするわけです。10年後に本作と見比べて、見劣りしないアニメ作品ってどれだけあるかなー、と、そんな事を思ったりしました。


邦題は「おさるのジョージ/Curious George」で、7月22日より公開となるそうです。

IMDb: Curious George
Official Site: Universal

CJ3


CJ1


CJ2


curious george