舞台は第2次世界大戦の戦火に巻き込まれたロンドン。資産家の夫が死に直面したヘンダーソン婦人(ジュディ・デンチ)。家族はおらず、時間と金だけは余るほどある彼女は、まったく知識も経験も無い演劇経営を思いつき、ウェストエンドにある劇場施設を購入。腕の立つ演出家(ボブ・ホスキンス)を雇い入れた。
それからしばらくして彼女が思いついたのは、裸の女を舞台に出すという当時としては常識ハズレのとんでも企画。コネを最大限に使ってお役所から引き出した条件は、「舞台の上で女が動かなければ、絵画や彫刻の裸婦像の類とみなせる」というもの。そうやって、大きな議論と反響を呼ぶことになる公演が始まるのだが…


ハイ・フィデリティ 」や「堕天使のパスポート 」のスティーヴン・フリアーズ監督が演出した、ドイツ戦火のロンドンを舞台にしたロマンス・ドラマ。昨年のオスカーに主演女優賞と衣装デザイン賞の2部門でノミネートされ話題となりました。


米国での配給は、ハーヴェイとボブ・ワインスタイン兄弟が運営する新会社の The Weinstein Company。 同兄弟が1979年に設立したミラマックスは、秀作ドラマ映画を海外から買い付け米国で公開する手法が大成功。「イングリッシュ・ぺイシェント 」とはじめとして、ブルトーザーでかき集めるかのようにオスカーの各賞をかっさらっていった活躍は記憶に新しい所。
1993年に70億でブエナビスタ(ディズニーの娯楽部門)に買収されてからも、創設者兄弟が直接コントロールする状態が続いていましたが、「華氏911 」などの公開をめぐり深く対立(ディズニーって、ポリシーは無く金になることはなんでもやる、というイメージがあったんのですが…)

結局二人は 2005 年に独立・前述の別会社を創立。「スクリーム 」フランチャイズなどを生み出した若者向け映画の製作部門 The Dimension Films も引っ越す事になったのだとか(タランティーノをはじめとする映画人達も一緒に移籍したらしい)。


そんな与太話は置いておいて、この作品、前評判がえらく高かったので、それなりに構えて観に出かけたのですが、意外なまでに俗っぽく B 級色の強い大衆作品でした。ジュディ・デンチとボブ・ホスキンスの距離感の取り方は、劇中の設定もそれを生かす演出も巧いなぁ、とひどく感心しましたが、それ以外はかなりベタベタ。文芸作品だと構えず、気楽に見られるコメディとして期待するのが正解だったのかもしれません。

アメリカでは11億円ちょっとの集客成績で、これはアートハウス系の興行としてはまずまず、なんだと思います。振り返って考えるに、やっぱりイギリス映画独特の癖やアクも強くて、そういう部分が欠点に見えず能動的に楽しめる人にはなかなかいいんではないかと思ったりもしました。日本でも今年公開予定だそうですが、さて…


IMDb: Mrs Henderson Presents
Official Site: The Weinstein Company

Mrs Henderson Presents