軽率でズルでお調子者、アライグマの RJ (=アール・ジェイ)(声:ブルース・ウィリス)は、空腹に耐えかねて危険を冒し、寝入っていた熊のヴィンセント(ニック・ノルティ)の寝床から食料をこっそり盗み出そうとする。欲を出し過ぎ寸での所で失敗し掴まった RJ に対し、ヴィンセントは6日以内に同じだけの食料を用意しなければ替わりにお前を食べるぞ、と脅される。
無理難題に頭を抱え途方に暮れている RJ の前に現れたのは、冬眠明けの亀やハリネズミ、フクロねずみ、スカンクとリスの一団だった。注意深く用心深いリーダー格の亀(声:ギャリー・シャンドリング)は、今まで持って生まれた勘と慎重さで危機を回避してきたが、そんな彼を驚かせたのは森の真ん中に突然出来ていた長い生垣。すぐ間際まで迫った宅地開発で彼らの住む森は大幅に縮小されていたのだ。事情を飲み込めずなすすべを知らない"田舎物"の一行を見た RJ は、彼らをだまし新興住宅地から人間の食料をどんどん盗んで6日の期限内にヴィンセントの要求を満たそうと画策するのだが…


ドリームワークス SKG によるファミリー向け3次元アニメ。米国では「ダ・ヴィンチ・コード 」と同じ週に公開され、公開3週目以降はダ・ヴィンチを上回る集客力を見せ、今週までの累計興行収入は130億強。

演出は「シンドバッド 7つの海の伝説 」や「アンツ 」のティム・ジョンソン監督。元々の脚本はビル・マーレイとハロルド・レイミスのコンビを想定して書かれたそうで、その後ジム・キャリー主演、2005年末公開で企画が走るものの彼が降板。その後をブルース・ウィリスが埋めたんだそう。声の出演は、スティーヴ・カレル、ワンダ・サイクス、ウィリアム・シャトナー、ユージン・レヴィ、トーマス・ヘイデン・チャーチなど。


振り返って考えるに、ディズニーが1994年の「ライオン・キング 」の超大ヒットで確立した 2D アニメ映画儲けの方程式(大人の鑑賞に堪えられるクオリティ+モラル・ドリブンな安心プロット+ファスト・フードとのタイアップ)は数年の間に渡って絶大な力を発揮。しかし結局 3D アニメの安定した集客力の前に 2D アニメは破れ(累計興行成績で比較すると 3D はとうの昔に 2D を抜いている)、低予算で小ヒットを狙うニッチ市場へと後退したわけです(ディズニーによるピクサーの買収劇も、今考えれば 2D アニメの敗北宣言なのかもしれません。そう言えば前述の「シンバッド」も米国で大ゴケして日本では劇場未公開だとか)

3D アニメという枠で括ると、この作品も、しばらく前に公開されたディズニーの「The Wild 」にしても、今週始まったばかりの「カーズ 」にしても、いずれも 3D アニメの優れた集客力パフォーマンスを見せています。一方で近年各配給会社のドル箱となっている DVD の売り上げについては、3D アニメは実写映画に比べて劇場興行収入に対しての割合が非常に低くなる作品が多いそうです。劇場に足を運ばせる力は強くても、繰り返し観たいと思わせるまでには至らない、という事なのかもしれません。


本作品も、明るく楽しい演出に無駄のない編集でアニメーションの動きを味わえ、期待を裏切らない出来ではあるのですが、期待を大きく超えるあと一歩の深みと魅力には欠けているかも、と思わなくもなかったです。米EW 誌のリード映画評論家であるリサ・シュワルツバウム女史は、黒のパンツスーツ+スタバのカップに口紅の跡をつけ SUV を乗り回す、"敵役"のキャリアウーマン=グラディス(声:アリソン・ジャネイ)に対する製作者側の微妙な敵意を感じとったと書いていました。言われてみればその手の潜在意識のかすかな流出に微妙な引っかかりを覚えていたのかもしれまえん。


日本では8月5日よりの公開予定だそうですが、邦題の「森のリトル・ギャング」はまだいいとして吹き替えの役所広司、武田鉄矢、石原良純、夏木マリってどういう事…?


IMDb: Over the Hedge
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