ライトニング・マックイーン(オーウェン・ウィルソン)は新進気鋭のNASCAレーサー。ルーキーながら三つ巴のチャンピオンシップ争いに加わり、いよいよシーズンも最終戦を迎えることに。次の開催地カリフォルニアへ移動する途中、アクシデントから名も無い辺ぴな田舎町へと迷い込み、そこで不機嫌な長老ドック・ハドソン(ポール・ニューマン)や明るく知的なサリー(ボニー・ハント)らと顔を合わせる事になるのだが…


ディズニー・ブランドで配給されるピクサー製作の最新 3D アニメ。シンデレラ城のロゴで始まる作品で、もちろんお子様OKのGレーティング。
ダン・ フォゲルマンの脚本を「モンスターズ・インク 」や「チキン・リトル 」のロバート・L・ベアードが監修し、演出は「トイ・ストーリー 」や 「バグズ・ライフ 」で知られるジョン・ラセター監督が担当。ランディ・ニューマンのサントラ、とガチに固めな製作スタッフで、期待通りに安定した仕上がりを見せます。


お子様向けの表情の裏に、子供をつれてくる親へのおもねりが隠れている、というのはいつものお約束。エッジが尖ったキラビヤカなNASCAレースシーンから、国道66号線沿いの田舎町で黄金の60年代への哀愁、胸を時めかせながら恋人とドライブするワインディング・ロード、農場で道なき道を自由奔放に走る楽しさ、土ぼこりを巻き上げながらタイヤを滑らすダート、と車にまつわる様々なシーンを感情豊かに取り込んだ、車文化に対するオマージュが散りばめられ、製作者自身が本当に作りたい物を楽しみながら作りこんでいる爽やかさが感じられます(この点、大人の計算高さが鼻についた「Mr.インクレディブル 」よりずっと高得点) ← 例えば監督のお父さんは昔シボレー(GM)の部品部門のマネージャだったそうで、車とアメリカ人の緊密さを改めて考えさせられる場面も多かったように思います。


ご存知の通り、つい先日ピクサーは7千4百億でディズニーに買収され、今やディズニーの一部門。何かと金勘定にうるさかった前CEOのマイケル・D・アイズナーと対立が絶えなかった(例えばトイ・ストーリー3を安価に作り捨ててビデオ・リリースしようとしたディズニーを必死で止めようとしていたピクサーの関係のネジレが噂になっていました)ピクサーですが、今はピクサー側にクリエイティビティーの完全なコントロールが保証されている体制になったとかで、とりあえず仲良くやっているようです → 93年に同じくディズニーに70億円で買収されたミラマックのその後(マイケル・ムーアの「華氏911 」やケヴィン・スミスの「ドグマ 」の配給をめぐり激しく対立→すっかり死に体)を考えるにつけ、当たりが続いているうちはいいんだろうけど将来的にはイロイロありそうだなぁ、と横から勝手な心配などもしています。


ところで、ピクサーはアニメーション作成用にグリッド化された専用システムを構築し、その処理速度は前作「Mr.インクレディブル 」の4倍早くなってるそうですが、それでも1枚の絵をレンダリングするのに17時間かかったそうです。って事は、24フレーム/秒にリアルタイムで表示するにはあと、146万8千8百倍の演算能力が必要…映画品質でリアルタイム演算って、PS3 でもまだちょっと足りそうにないです。


トイストーリーの原案でも知られるジョー・ランフトが公開直前に交通事故死したり、と、ちょっとアレなニュースもあったりしましたが、劇中には楽しい遊び、例えばシューマッハがフェラーリ役で声を当てていたりして(あ、もちろん兄のミハエルの方)、とても楽しく観劇できました。邦題は「カーズ」で7月1日公開だそう。万人にお勧めです。


IMDb: Cars
Official Site: Walt Disney Pictures

PS 冒頭のおまけ併映短編アニメ(One Man Band )もとっても楽しめました。例によってエンディング・ロールにおまけがてんこ盛りなのであわてて席を立たないよーに


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