小さい頃は虐められっ子で、絵を描いて現実逃避する事で自己を確立してきたジェローム(マックス・ミンゲラ)。高校卒業後、東海岸にあるアート・スクールに入学するのだが、芸術を目指す同級生達は揃いも揃ってド変人ばかり。やはり相当な変わり者である先生(ジョン・マルコヴィッチ)にはちっとも褒めてもらえず、クラスメートからは自分の作品を散々ケナサれ、自分の才能や将来に悩む彼。
そんな所に追い討ちをかけるように悪友(ジョエル・デヴィッド・ムーア)に紹介されたのが卒業生でいまだに鳴かず飛ばずの売れない中年アーティストのジム(ジム・ブロードベント)。
スサみきった人格にビビリながらも、彼のキャラクターや作品に不思議な魅力を感じるジェローム。また、憧れのマドンナで、クラスへ時々デッサン・モデルとして顔を出す美女オードレイ(ソフィア・マイルズ)と仲良くなれ、彼の前に一筋の光が差し込み始めたかに思えたのだが…


異色の青春映画「ゴーストワールド 」の演出テリー・ツワイゴフ監督と脚本のダニエル・クロウズのコンビが再びタッグを組み製作した、美術学校を舞台にしたヒネくれてニヒルなアイロニカル・コメディー。主演の男の子、マックス・ミンゲラはあのアンソニー・ミンゲラ監督のご子息だそう。ヒロインを演じるソフィア・マイルズ嬢と言えば「サンダーバード 」のレディ・ペネロープ役、また最近ではジェームズ・フランコと共演した「Tristan + Isolde 」(←なかなかよろしかった)が印象的。


脇にジョン・マルコヴィッチやジム・ブロードベンドの二人を配し名前一覧からはそこそこのキャスティングにも見えますが、ソーラ・バーチ、スカーレット・ヨハンソン、そしてスティーヴ・ブシェミの3人が瑞々しい演技を見せた「ゴースト…」を思い返して比べると、役者の層の薄さが少し気になります(ブシェミはちょっぴりカメオ出演するのでお楽しみに)。


バッドサンタ 」でも発揮されたテリー・ツワイゴフ監督の悪ふざけは本作でも爆発。底意地の悪い皮肉や当てこすりが特にクラスメート達のキャラクター造形に投影されていて、ゲラゲラ笑わされました。
クラス一下手な生徒が提出した、今話題の「はいだ しょうこ画伯」もびっくりな稚拙な絵を、口だけ達者で手はまるで動かない屁理屈馬鹿が絶賛するシーンなど、今思い出してもめちゃくちゃ可笑しい。そういう意味では満足した部分も多いです。


一方で、事前に期待したほど満足感が観劇後に得られない不満も。面白おかしく主人公のピア・プレッシャーと劣等感を描き、下世話で劣情や嫉妬に負ける若者達を登場させ、清純な憧れのヒロインを絡ませ、と、青春映画の王道を行く設定で始まりながら、校内で発生した連続殺人事件を使ってミステリー・サスペンスの味付けもあり、最後は才能よりも話題性が物を言う美術界の批判を入れて、と、驚くほどキレイにまとめられている物語ではあります。でも、コギレイにキチンとまとまり過ぎているせいなのか、不思議と個々のインパクトは少し物足りない印象。前フリが思わせぶりなだけに、で、結局言いたい事はこれ?、みたいな肩透かしのオチが、個人的にちょっと合わなかった、というのもあるんでしょうけど。


「ゴースト…」の繰り返しではなく、違う方向性を探りに行ったテリー監督の勇気は認めたい所ですが、深みと広がりがあった「ゴースト…」での渋みがすっかり取れた結果、単にスケールの小さい普通の商業作品的な味気なさが残った部分にはマイナス点かなぁ。


受ける人には受けそうですが、あんまり一般受けはしそうにない気もしましたです。アメリカン・インディが好きな人にはお勧めしますが、「ゴースト…」を期待すると、ちょっと違う~、となるかもしれません。


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