危険な現場からは引退したベテラン・エージェントのイーサン(トム・クルーズ)に、元上司のマスグレイヴ(ビリー・クラダップ)が接触。彼に特別なミッションへの応援参加を求める。
愛する婚約者ジュリア(ミシェル・モナハン)の事もありイーサンは参加をためらうが、捕らわれたかつての教え子リンジー(ケリー・ラッセル)の救出作戦のため、彼はもう一度現場に戻ることを決意する。
新旧の顔を混ぜたベストチーム(ヴィング・レイムス、マギー・Q、ジョナサン・リス=マイヤーズ)を編成し、国際武器商人(フィリップ・シーモア・ホフマン)の手から万全の体制で救出作戦を決行するのだが…


パラマウントのドル箱フランチャイズとなった、ご存知「ミッション・インポッシブル」シリーズの第3弾。主要な出演者としては、上記の他にイーサンが属する IMF (インポッシブル・ミッション・フォース)の責任者役でローレンス・フィッシュ・バーン(短いながらも印象的な演技)他。


噂によると、元々この作品、2年前に公開予定で企画が進められていたという。しかし当初監督としてコミットしていたデイヴィッド・フィンチャーが別作品の演出のため抜けてしまう。続いて後任監督として連れてこられた「NARC ナーク 」のジョー・カーナハンが、トムと馬が合わずになんと1ヶ月足らずで辞任。予定されていたキャストの方も、前作から続投予定だったサンディ・ニュートンが抜け、スカーレット・ヨハンソンが抜け、ケネス・ブラナーが抜け、キャリー-アン・モスが、抜け、とドタバタ続き。
普通これだけ難航した作品は途中で空中分解するか、あるいは形だけ整えて何でもいいから劇場公開にこぎつけるが大失敗、みたいな悲惨な結末を迎えそうなものですが、これだけちゃんと作品にまとめて来たのは、実はトム・クルーズってプロデュースの才能は決して悪くないのかも? (考えて見れば、昨今のリメーク・ブームの火付け役が96年の第1作 だったように思えるし)。


ま、そんなこんなで火消し役として連れてこられたのが、最近TVシリーズでヒットを続けるJ・J・エイブラムス監督。元々はアフリカを舞台に臓器売買がどうの、とかいうストーリーだったのを大幅に書き換え、主人公イーサンの内面にある人間味を表に出そう、と軌道修正したんだとか。


ちょっと不幸だったのは、この映画公開にシンクロするかのように、トムのパーソナル・ライフのゴシップが世間に氾濫して、まるでこの映画の内容が彼の最近の行動の言い訳みたいな捉え方をされてしまっている事。「仕事より家庭を優先、をタブロイドで散々聞かされ、映画でそのママを見せて、馬鹿じゃねーの」っていうリアクションがあるわけですが、大部分の責任は作品の味付けを決定したエイブラムス監督にあるではないかと。
そもそも、映画第1作でのイーサンのクレア(エマニュエル・ベアール)に対する屈折した心理描写を思い出すと、奥さんに夢中で周りが見えてないイーサンという設定はどうしても嘘っぽくなってしまうわけで。


あと126分という決して短くない枠に、いっぱいいっぱいアクションを詰め込む編集はちと息苦しかったです。個々のアクションはとにかく凄い精度と密度なのですが、緩急とピッチのメリハリをもう少し効かせた方がいいと思います。この時間感覚のノッペリさはTV出身監督(本作が初劇場監督)というハンディもあったのではないかと。


個人的に、オリジナルのTV「スパイ大作戦 」をリスペクトした仕掛けや脚本には好感を持てました。それと「あんなにキレイな車なのに」ともったいがりながらランボルギーニを爆破させるマギー・Q嬢もセクシーですばらしく良かったです("フェリシティ"ことケリー・ラッセルは同じ女優だと気付かなかった。なんでだろう??)


製作費150億に対して、現在までの累計興行成績は122億。まずまずですが、期待ほどでは、という客の入りでしょうか。邦題「M:i:III」で7月8日から公開になるそうですが、さて日本ではヒットしますか?


IMDb: Mission: Impossible III
Official Site: Paramount

MI3