ブルック(ジェニファー・アニストン)とゲイリー(ヴィンス・ヴォーン)は付き合って2年になるカップル。ブルックはアート・ギャラリーに勤める家庭的な女性で、やんちゃなゲイリーは家族で経営するシカゴ・ツアー・バスの花形ガイド。ある夜、ふとしたきっかけでこじれた二人の関係はちょっとやっかいな事に。お互い相手が先に謝るまで、と頑張るうちにズルズルと悪い方へ。後に引けず、かといって共同所有するマンションには二人のローンが残っており、出て行くに出て行けない。そんな二人は、互いに意固地になり張り合うのだが…


ヴィンス・ヴォーンが原案を考え、暖めた企画をペイトン・リード監督が演出。「Wedding Crashers 」の大ヒットによって、ベン・スティラー/オーウェン・ウィルソンらと絡むコメディが注目を集めているヴィンスがまたまた注目を集めているロマンティック・コメディー。一方彼は、この夏に日本公開を控えた「サムサッカー 」に代表されるような真面目な小作品にも多く出演しており、考えてみれば彼のメジャー・デビューとなった「スウィンガーズ 」も、メイン・ストリームとは微妙に違うテイストがありました。その頃からたびたび競演している曲者役者の一人、ジョン・ファヴローも本作に顔を出していますが(ずいぶん太りました)、バーで交わす狂気じみた二人のやり取りには多いに笑わせてもらいました。


ヴィンス・ボーンとジェニファー・アニストン、ブラピとアンジェリーナ・ジョリーの二組のカップルを略して "Vaughniston/Brangelina" (ヴォーニストン/ブランジェリーナ)などと呼ぶそうで、芸能ゴシップからも注目を集めている本作品、自分が見に行った回の混雑具合はなかなかだったし、第1週でまずまずの観客を動員することは間違いないでしょう。ただ、2週目以降の失速も予感できるような気がします…


客の一部にはTV「フレンズ 」での、レイチェル(演じたのはもちろんアニストン嬢)&ロスのようなキュートでドタバタした恋愛コメディを期待しているんでしょうが、本作はもうちょっと大人の苦さが入っている部分があり、TVラブコメほど甘くはありません。
またヴィンス・ヴォーンの真面目な顔の中に見せる錯乱した目の光を楽しみにしている客も多いと想像されます。が、彼自信が原案から膨らましてきた事による弊害なのか、ジェニファーの演じるヒロインの書き込みは厚みがあるのに、一方彼の演じる男主人公は今一つ描写が淡く、キャラクターの立ちがあまありよろしくありません。


脚本の整理が足りないのか、演出の技巧が追いついていないのか、少し物足りないサブ・プロットも多く、「チェイシング・エイミー 」や「ビッグ・ダディ 」のジョーイ・ローレン・アダムスの使い方なども、かなりもったいない気が。またサブ・キャラを演じる役者さんもやや層の薄さが目に付きました。


夏のシカゴを舞台にしたラブコメと言うと、ジュリア・ロバーツ&キャメロン・ディアスの「ベスト・フレンズ・ウェディング 」を思い出しますが(野球やボート遊覧、テーブルで合唱など、被っている小道具も多い)、個人的には本作より"…ウェディング"の方が総・合・的には出来が良かったかなぁ、とも思ったりしました。


期待の入れ方を間違うとあまり楽しめなさそうな作品でもありますが、真面目にしっとりと仕上がっていて、ヴィンスやアニストンのファンなら映画館まで足を運んでも損はしない作品だと思いました。


IMDb: The Break-Up
Official Site: Universal Pictures

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