夢遊病の娘シャロンの症状悪化に悩んだ母親ローズ(ラダ・ミッチェル)は、娘が悪夢にうなされしばしば口にする地名「サイレント・ヒル」に治療の鍵があるに違いないと考え、娘を乗せウエスト・バージニア州へと車を走らせる。
高速道路から外れた人里離れた小さな炭鉱町は、13年前に大火事で完全に封鎖され、立ち入りが禁止されていた。白バイに乗った女性警官シビル(ローリー・ホールデン)を振り切り、猛スピードで車を走らせるローズだったが、霧の中でハンドル操作を誤り路肩に転落し気絶。気が付けば、娘のシャロンの姿はなく、ゴーストタウンと化したサイレント・ヒルに一人取り残されていたのだが…


ご存知、コナミのプレステ用ゲームの映画化で、オリジナルのゲーム製作者の中から山岡晃氏の名前もクレジットされていたりもします。演出は「ジェヴォーダンの獣 」でフレンチ・アクションに独特のセンスを加えて見せた クリストフ・ガンズ監督。
ほぼ出ずっぱりで、表世界と裏世界を行ったり来たりしながら、ひたすら理不尽に
嫌な目に会うことになる女主人公のローズ役に「マイ・ボディガード 」や「メリンダとメリンダ 」のラダ・ミッチェル女史(監督の希望本命はキャメロン・ディアスだったそう)。
一方、ショーン・ビーン(「フライトプラン 」や「ロード・オブ・ザ・リング 」)が演じる、父親のクリストファーの出番は少なめ。なんでも当初の脚本には父親がまったく登場しなかったために、書き直しになったそう(ゲーム版での父親が娘を探すという設定が、何ゆえ映画では母親が娘を探す、に変更されていたのかは、良くわかりませんでしたが)。


さて、本作を見て感心させられたのは、良く練られたビジュアル・スタイルのセンスの良さでして、特にサイレンと共に行ったり来たりを繰り返す表世界と裏世界の差異がとてもよろしい具合にツボにハマりました。こりゃーすげー、と素直に納得するスタニングなビジュアル・エフェクトがてんこ盛り。これ見た後に、焼肉は食べたく無くなること請け合い。


で、お話を楽しめたかというと、なんだか一方的な「なすすべの無さ感」に押し切られた感じで、今一つ腑に落ちないような印象も。
ひるがえって考えるに、このモヤモヤ感、いわゆるコンピュータ・ゲームと、小説・戯曲・映画脚本の違いに起因するような気もしてきます。
この手のゲームは、キャラクタの動きを操作し、一人称でアクションを起こせる(あるいは遠隔ナビゲートできる)し、またマルチ・エンディング等、流れの分岐の選択を受け手に与えています。一方、本や映画は決まった道筋から外れることなく頭から最後まで流れるわけで、自ずと物語進行に不自然さや強引さ、作為性を隠すテクニックが使われるわけです。
この作品は、ひどくまじめにゲームを映画に起こそうとするあまり、ゲームの文体をそのまま映画に持ち込んでいて、その部分はやっぱり映画として評価すると厳しい物になってくる、というような事なんでしょうか?


近年、人気ゲームの映画化という企画はちらほら目にしますが、なかなか良作にめぐり合えないフラストレーションもあります(ま、アメコミの映画化だって当たりはごく一部ですけど)。この作品のような、3D ゲームから実写映画への昇華をまじめに目指す、というアプローチももちろんありでしょうが、逆に実写映画にゲームの文法を持ち込んで、お手軽に安く作っちゃうという逃げ(最近の例では駄目ダメB級ホラー「Stay Alive 」など)もありかなぁ、とそんな事を考えました。


いろんな意味でまじめに作り過ぎかも、と感じた作品で、例えばこの手の映画で127分はないだろう、と突っ込みたくもなったり(若者向けのホラーなら普通は100分程度まで刈り込むんじゃ?)。予算50億で、全米46億ちょっと、の興行成績は、商売的には失敗作、と分類されるのでしょう。

今後注目したいのは、UFO エンディングのようなぶっ飛び代替エンディングがDVDに収録されるか? と、日本に凱旋帰国上映してどれだけ成績を残せるか? という点だったりします。
邦題は「サイレントヒル」で、7月8日より、丸の内ピカデリー2ほかにて全国ロードショー公開だそうです。


IMDb: Silent Hill
Official Site: Sony Pictures

Silent Hill