時は近未来、場所はアメリカ合衆国。突然変異の遺伝子 X-Factor を持ち、思春期になると超人的な能力を発揮し始める子供達の数は日増しに増え、ミュータントの存在による様々な軋轢は大きな社会現象
と化していた。
マグニート(イアン・マッケラン)らの強行なミュータント運動家が引き起こす衝突に対応するため、アメリカ政府は政府特別機関を設立。その後ろ盾を受け、科学者はX-Factor 遺伝子の働きを抑え、ミュータントを人間化する新薬の開発に成功する。「普通の人間になる治療」を始めた政府に対し、マグニートを筆頭とする一部のミュータント達は猛然と反発。厳重な警備に守られたアルカトラズ刑務所跡地の研究所を強襲しようと計画するのだが…


アメコミ映画化の成功例の先陣を切った、「X-Men」シリーズの最終章。第1作目は全世界で300億、2作目は400億の興行収入を記録し、Fox のドル箱となったフランチャイズ。メインの出演者は前作からの引き続きながら、監督は迷走していたWBの「スーパーマン・リターンズ 」(*米国公開予定6月30日、日本配給予定8月19日)に引き抜かれたブライアン・シンガーが降り、逆に同作品を降板になったブレット・ラトナーがこちらを引き継いだという。そんなせいもあってか、同性愛差別のモチーフを芯にドラマ性が強く出ていた1・2作と比べ、本作は娯楽アクション大作風の仕上がり。


人工中絶や、差別される側と差別する側が逆転する逆差別の構造など、掘り下げればぐっと面白くなりそうなサブ・プロットが多数散りばめられていながら、テンポ良すぎるカットで全部をうっちゃり、どんどん前に走る編集にはやや不満も(.…いくらティーン向けのアクションでも105分まで刈り込む必要もないんじゃなかと思う)。反面、アクション映画として見せ場の立たせ方、見得の切り方、はこの監督流でツボをちゃんと得ていて、第1週の全米興行収入120億という超大ヒットぶりも納得。


パトリック・スチュワートや、イアン・マッケラン(「ダ・ヴィンチ・コード 」みた直後にマグニート役を見るとかなり変)、ファムケ・ヤンセンやハリー・ベリー、ヒュー・ジャックマンなどなどおなじみの役者が勢ぞろい。
少し戸惑ったのは、全く新しいタイプのミュータントのリーチとして登場する天才子役のキャメロン・ブライト君。どの出演作をとってみても演技も雰囲気もすごくいい、のだけれど、近年似た役で映画に出すぎなんじゃないかと心配。 レベッカ・ローミンと競演もしていた「Godsend 」、皮肉の効いたインディの「Thank You for Smoking 」、ポール・ウォーカーの隣ん家の子を演じた「Running Scared 」、そしてミラ・ジョヴォヴィッチの近未来SF「Ultraviolet 」と、ここしばらく演じているキャラクターが被りまくりな気がするんですけど。


本作では、今まで映画版で未登場だったキャラクターも数多く登場。ちょっと驚いたのがビーストを演じたのがTVドラマ「フレイジャー 」で有名なケルシー・グラマーだった事。エンジェルを演じるのは、TVドラマ「Six Feet Under 」で根暗で内気な青年だったベン・フォスターで、これは当初ちょっと違和感ありかも。あと今回壁抜けが特技のキティ・プライドを演じたのは身長152cmのロリータ女優 エレン・ペイジだったのですが、問題作「Hard Candy 」でのとんでもない役が記憶に新しく、ちょっと背中?がむずむずしました。


160億円とも210億円とも伝えられる制作費ですが(媒体によって大きく異なる=ネット上で伝聞される数値は広告宣伝費込みか抜きかが不明瞭だったりもする)、フランチャイズ3部作を締めくくるスケールの大きさに満足。
FOXはウルヴァリンを主役にしたスピンオフを製作するとの噂ですが、さてどうなりますか。邦題は「X-MEN ファイナル ディシジョン」となり9月に公開予定だそうです。


IMDb: X-Men: The Last Stand

Official Site: Twentieth Century Fox


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