舞台は近未来。人類は火星の地下奥底から太古に滅び去った文明の跡を発見。しかし遺跡の発掘と解明を進める火星の移民ステーション内で緊急事態が発生する。異常が報告されロックアウトされた研究施設には、事態の収拾のためサージ(ザ・ロック)をトップにした軍の特別編成チームが直ちに派遣される。地球と火星とを結ぶワープ施設から現地に降り立った一行は、施設から実験データの回収を担当する研究員サマンサ(ロザムンド・パイク)と合流。彼女は、隊長が一目を置く凄腕のジョン(カール・アーバン)の妹だった。
状況調査とデータのバックアップを進める一行は、かつて見たことも無い奇怪な生物の襲撃を受ける。なんとかその場を持ちこたえた彼らだったが、忽然と消えた研究員達の足跡を探すうちに、恐ろしい事件の真相が明らかになっていく…


迷路の中を歩き回り、一人称視点で銃を乱射して敵を倒すというスタイルで一世を風靡した往年の PC ゲーム「DOOM」の実写映画版(こーゆーお馬鹿な企画を通すのは案の定 Universal Studios だった)。原案を書いたのは新人のデイヴ・キャラハンで、それをベテランのウィズリー・ストリックがブラッシュ・アップした物を、撮影監督として知られ「ロミオ・マスト・ダイ 」でメガホンを取ったアンジェイ・バートコウィアク監督が脚色。


キャスティングのネーム・バリューだけ聞くと、はこの手のキワモノ B 級映画にしては力の入った印象。でもカール・アーバンは「ロード・オブ・ザ・リング 」で見せた風格と気品は感じられず、ロザムンド・パイクも「007 ダイ・アナザー・デイ 」では輝いていたきらびやかさな華麗さは無し。そんな中で一人目立っていたのはプロレスラー→役者転向のザ・ロックの好演。やや整理不足の脚本のせいもあって、あまりキャラクターに芝居をさせる時間が無い作品でしたが、ロックの演じる沈着冷静な隊長は、プロット・ドリブンの作品の中で唯一感情移入ができるキャラクターに昇華していたと思います。


で、この作品、いろいろ考える所も無くは無いのですが、所詮はゲーム原作の"企画"物なわけで、見に来る観客の多くは、深い人間性を高尚に歌い上げるドラマを楽しみにしているわけはなく、どれだけエンターテイメントしてるか、という点のみが期待されているわけです。そういう視点に立って見ると、多少のわかり難さがあるものの、迷路で銃を乱射して怪物退治、というカタルシスは十分画面から伝わっていて、きちんと成功している作品なんだと思います(なので全米初登場1位も、まずまず納得)


また、「こういう現象からこの原因が推測できないなんて、あの登場人物達は SF 小説や SF 映画を見た事ないんだろうか?」と素朴と突っ込みたくなる気分もムラムラ沸きますが、神視点でキャラクターを操作するゲームの構造を模している、という説明に対しては無力な批判になっちゃうわけで。もっとも大傑作映画「スクリーム 」のように、自分達が典型的な SF アクションドラマに出演している事を自覚しているキャラクターが出演する SF アクション映画、ってのも企画としてはアリかな、とも思ったりしますが。


唯一なんだかなぁ、と思ったのは、物語設定のバックグラウンドが先日観たばかりの映画「serenity 」(バフィー・シリーズのジョス・ウェドンが手がけた TV シリーズ "Firefly" のスピンオフ) と丸写しコピーのようにほぼ同じだった事。こういう不幸な偶然ってのもあるんですねぇ。


100分きっかり、と決して長い尺ではありませんが、もう少しエピソードを刈り込んでメリハリとスピード感のある編集でも良かったかも。ゲームのエンディングに相当するラストは、絵も演出もよく出来ていて、盛り上がりは十分。終わりがスッパリ決まると、途中のいろいろも全部許せる気になってしまうのだ。
頭から尻まで、お約束の連続がお約束通りにつながる B 級アクション、素直に楽しんで観劇してきました。

気の合う友達同士で映画館に足を運んでも、レンタル待ちして家で楽しんでもいいんじゃないかと思います。 (-- Mac という日本人キャラクターが登場しますが、演じてるのは中国系の役者さんみたいでした… --)


IMDb: Doom
Official Site: Universal (←この配給会社、B 級製作のプロですな)


Doom