時は1980年代半ば、所はアメリカ北部のミネソタ州。ジョージィ(シャーリーズ・セロン)は暴力を振るう夫に見切りをつけ子供二人を連れて故郷へと戻る。しかし成人前に未婚で長男を出産した彼女の過去を、保守的な町も彼女の父親(リチャード・ジェンキンス)もまだ許してはいなかった。
知り合いのグローリー(フランシス・マクドーマンド)の口利きもあって、町の中心産業である鉄鉱石採掘現場で、鉱夫として働き家計を支える決意をするジョージィ。がそこは長年続く男社会に染まった職場で、彼女は執拗な嫌がらせを受けるのだったが…


カーラ・ビンハム著「Class Action: The Story of Lois Jenson and the Landmark Case That Changed Sexual Harassment Law」で描かれた米国初のセクハラ集団訴訟を緩やかにベースにし、マイケル・サイツマンが脚色、「クジラの島の少女 」のニキ・カーロ監督が演出した、ヒストリー・ドラマ。なるほど、考えてみると「クジラ…」も伝統に縛られた男尊女卑の仕来りと戦う無垢なガール・パワーっていう話でした。


出演は、シャーリーズ・セロンとフランシス・マクドーマンドというオスカー・コンビに、親友の夫役でショーン・ビーン、町に戻ってきた誠実な弁護士に ウディ・ハレルソン、厳格な父親が「Six Feet Under 」でもグルーミーで不機嫌な役だったリチャード・ジェンキンス、優しい母親はシシー・スペイセク、と豪華ケンラン。


本作品、今風の小細工や飾りを排しシンプルかつストレートに描かれ、物語のクライマックスを最後の法廷シーンへと盛り上げつつ組み立てたドラディッショナルな作り。126分という尺を飽きさせないパワーと明瞭なわかりやすさ、はカロー監督の持ち味なんでしょう。マイケル・サイツマンの脚色も、ウディ・ハレルソンの法廷パフォーマンスが物語のラストに繋がるギミック等、よくできていてとっても楽しめました。


一方で、あくまでわかりやすくクリスタル・クリアに描かれたお話の方向性は、いささか白黒はっきりし過ぎているきらいもあって、あんまり頭を使わせてくれないというほのかな不満もあったりします。
真面目な正確さを放棄するんだったら、「エリン・ブロコビッチ 」のようにエンターテイメントと割り切った切り口でもいいんじゃないかな、とも思ったりしました。


劇中に挿入される裁判シーンは、米国でセクハラの認知度を飛躍的に高めるきっかけとなった、クラレンス・トーマスと女性部下アニタ・ヒルの裁判の様子。あれから15年あまりが過ぎているわけで、世の中の常識の変わり具合と変わらなさ具合の両方に改めて驚いてみたりした観劇となりました。


制作費35億に対し、興行収入6億半ばで公開初週5位登場はややさびしい気もしますが、丁寧に作ってある良作で素直に面白かったと思いました。


IMDb: North Country
Official Site: Warner Bros.

NorthCountry