ドリュー(オーランド・ブルーム)はスポーツ・シューズに勤務する新進気鋭のデザイナー。彼が長年打ち込んできたデザインは新作ラインナップのフラッグシップとして採用され彼の名前は世界的に有名に。しかし新商品の打ち上げは大失敗し、会社に約一千億の損害をもたらす。会社は首になり、美しいガールフレンドのエレン(ジェシカ・ビール)にはフラれ自暴自棄の彼に追い討ちをかけるように、妹( ジュディ・グリア)から父が旅行先で突然死んだとの電話が。
長男の彼は父の遺骨を受け取りにケンタッキーのエリザベスタウンまで急きょ旅する事になるのだが、誰も居ない深夜のフライトでオーバーなくらい親切でなれなれしいステュワーデス(キルステン・ダンスト)とめぐり合う…


ザ・エージェント 」や「あの頃ペニー・レインと 」で知られる有名なキャメロン・クロウ監督が脚本と演出をこなし、プロデューサにはトム・クルーズの名前も。
冒頭に出てくるオレゴンはポートランドの靴メーカーは、ナイキを意識しているのは自明で(実際ナイキの本社がある)、アレック・ボールドウィンが演じる社長もなんとなく実在の人物を彷彿。PDX 空港のショットは全然違うなー、と思って調べたら、やっぱりカリフォルニアの某空港で撮影されたんだそう。


打ち込んだ仕事が挫折し失意の青年が、父親の生まれ故郷の田舎で家族やコミュニティの暖かさに触れ、気の合う女性と知り合い、次第に生きる力を取り戻していく、というようなプロットが中心に流れているのですが、実は見終わって数日経った今でも、なんとなく自分の中で整理がつかないような、不思議なモヤモヤが残っている作品です。


オーランド・ブルームは相変わらず男前だし、キルスティン・ダンストも例によってキュートで二人のケミストリもばっちり、だけど、美形のブルーム君からは世界的に有名になったインダストリアル・デザイナのカリスマ性も、そこから落ち込んだ落差の大きさも感じる事はできず。
また、雑多なエレメントが未整理のママどんどん挿入されて積み重なるストーリーはひどく混乱しているし(スーザン・サランドンのタップ・ダンスや下ネタ・ジョーク、ありゃー、何なんだ…)、2時間を越える尺のわりには未消化のエピソードも多く感じてしまう。


さすがクロウ監督、とうならせる抜群のBGMの選択ながらも、次から次へ切り替わる忙しさがウザく、もう少し編集に力を入れてもよかったかもだ、とも。(某映画評論家は「素人の旅行体験話って本人は面白そうに振り返ってるけど聞いてる周りはしらけちゃう事あるよね」というような喩えを出してましたが、言いえて妙だなぁ…)


そんなこんなで、いろいろ不満はあるのですが、部分部分ですばらしく完成度の高いカットもあって(隣のおばちゃんはボロボロ泣いてたし)、ちゃんと満足している部分も多いので、全体的にどう考えてたらいいものか、なんとも評価に悩む観劇になったのでした。

邦題は「エリザベスタウン」となり、来月公開らしいですが、テーマはなかなか深く複雑なので、オーランド・ブルーム目当てで来る若い観客にはあんまり受けないかもなぁ、などと余計な心配をしてみたりしました。


IMDb: Elizabethtown
Official Site: Paramount Pictures

Elizabethtown