ローズ(トニー・コレット)とマギー(キャメロン・ディアス)とは、似ても似つかない何から何まで違う姉妹。姉のローズは一流大学を卒業しフィラデルフィアの一流弁護事務所に勤務するキャリア・ウーマン。アパートのインテリアに懲り、服や靴を買い揃えるものの、体型に自身が無くおしゃれな服を着る勇気も機会もなし。
一方妹のマギーは高校をぎりぎり卒業後、エントリー・レベルの職を転々とし続けている。おしゃれで美貌のマギーは男にモテる事のみが自我の中心で、生活はズタボロ。ホームレス同然の経済状況だった。
そんなある日、高校の卒業式に出たマギーは飛ばしてトイレで泥酔。迎えに行ったローズの目前で素行の悪いマギーは間借りした家を追い出され、仕方なしに二人は同居生活を始める。真面目一本やりのローズと自由奔放なマギーの関係は何かとギクシャクし、やがてマギーの決定的な失態に憤慨したローズはダメな妹を追い出すのだった。

当ても無く途方にくれるマギーが思い出したのは、父から死んだと聞かされていたはずの祖母エラが、どうやらフロリダで存命らしい事。古い手紙の住所を頼りに探り当てたフロリダ在住の祖母エラ( シャーリー・マクレーン)の元で、マギーは居候をはじめるのだが...


ジェニファー・ウェイナー原作の小説「イン・ハー・シューズ」を、「エリン・ブロコビッチ 」のスザンナ・グラントが脚色し、「L.A.コンフィデンシャル 」のカーティス・ハンソン監督が演出した、コメディ・タッチの家族ドラマ。
(オープニング・クレジットで「スコット・フリー」のアイキャッチャーが出たので、よもや?と思ったのですが、監督さんは別。リドリーはプロデューサ、トニーはエクゼクティブ・プロデューサとクレジットされていました)


プロモーションにはキャメロン・ディアスが全面に強くだされていて、実際この映画の中の彼女は新境地とも言えるすばらしい演技を見せるのですが、作品自体は姉と妹の二人に等しくスポット・ライトを当てる、というか二人の関係がメイン・テーマ
で、キャスティングを振り返って、トニー・コレットは期待通りの演技力。お約束として前半もっと激しく太っててもいいんじゃないかな、とは思いました。シャーリー・マクレーンは、悪くはないと思うんだけど、特に驚くような発見はなし。で、残るはキャメロン・ディアス嬢なわけですが、これがなかなかびっくりの好演技。

過去得意としてきたあけすけに明るい役作りに加え、キャラクター造形に奥の深さが出てきた感じ。劣等感の裏返しの明るさとか、外向的すぎるゆえに逆に孤独に陥っているマギーという難しい役どころですが、技巧的な脚本と演出に負けないだけの演技の厚みがよく出せていたと思います。


すばらしい姉妹役の演技の一方でローズの婚約者を演じたマーク・フォイアスタインのあんまりさに、ちょっと首を絞めたくなったりもしましたが、物語のテンポは中盤からどんどん加速して行き、2時間10分と今時の映画にしてはの長尺さを感じない編集の具合が非常にいい感じ。

靴のサイズ以外共通するものがない姉妹二人の関係の難しさと絆の深さを浮かび上がらせ行くのは、物語の影に隠れた二人の母親だったりするプロット上の仕掛けには正直うまいと思いました。


個人的にはラストになっての走りすぎとトーンの抑えが足りない部分に少し不満があったりもするのですが、全般に丁寧に作ってあって、題材も掘り下げ方も良く出来た作品だったと思いました。

メリーに首ったけ 」のディアス嬢を期待しているとちょっと肩透かしでしょうが(本作品はどたばたコメディじゃないしね)、暇だったらレンタル待ちせずに映画館まで足を伸ばしてもいいんじゃないでしょうか?

邦題は「イン・ハー・シューズ」として、今月12日から公開だそうです。


IMDb: In Her Shoes
Official Site: Twentieth Century Fox (←よく出来てます)

InHerShoes