ルイジアナの田舎にヴードゥーの秘力を使い残忍なスピリッツを封じ込めた女祈祷師が居た。彼女は家路へと急ぐが、村はずれの橋で交通事故を起こす。邪悪な執念が乗り移った蛇達は箱から逃げ出し、救出作業に当たっていたレイ(リック・クレイマー)を襲い、蛇に噛まれたは車ごと水中に落下してしまう。
その後死体となったレイは、13の邪悪な魂に支配され、村のティーン・エイジャー達を次々と襲い始める…


「Venom」 ("蛇の毒"くらいの意味)は、元々ビデオ・ゲームに想定されていたストーリーを映画化したそうで、脚本家としてクレジットされている二人も元々ゲームのシナリオ・ライターのよう。


そういう事情もあってか、普通に考えると、穴だらけの駄作B級映画にしか見えないわけで、それを裏付けるかのように、興行1週目で公開スクリーン数が500枚弱というえらく弱気なミラマックスの戦略(2週目は460枚で、3週目でほぼ打ち切りになるもよう)。驚く無かれ、第2週の1スクリーンあたりの週末(金→日)平均興行収入は2万7千円。一日5回のローテーション(12:00, 2:00, 5:00, 7:00, 9:00)と考えると、一回につき1800円 (27K = 3 * 5 * 1.8K)、ってことは上映中平均3人くらいしか(1800円=3×600円)劇場に居ないって事になる。実は自分が観た回も観客はぴったり3人でした。


で、つっこみどころ満載のこのアクション・ホラー・ムービー、文句を言い出せばきりがない。導入部の静かなシーンでは、犠牲者となる若者達を演じる役者のあまりの大根ぶりに驚き、ブロンドのグラマーを主要メンバーに入れる初歩の初歩がなってないキャスティング(混同するので普通はどっちかブルネットにするとか違う体型タイプにするとかする)に呆れ、しょぼい蛇のCGIに幻滅(水気が足りない感じ?)。


それでも時間や金の無駄ではなかった、と思ったのは、この手の出来が悪い映画を観るとなぜつまらないのか、どこを変えればどうなるのか、斜め上から批判的に映画を見つつ、改めて普通に見れる映画って極めて良く出来てる(=普通の映画を作るのもなかなか難しい)って事を再認識できる事。


改めて思うに、ゲーム・シナリオと映画脚本ってやっぱりツボが微妙に違うのだと思う(もしかして戯曲と映画ほど差は無いのかもしれませんが)。ある程度強制的に限定したシチュエーションに無条件にユーザをほうり込む事ができるゲームより、万人を納得させつつ物語に導く必要がある映画は、導入部は特に難しいように思えます(この映画は激しく失敗していた)。一方で、舞台や登場人物を絞込み、あまり画面をうるさくせずに物語を進行させるテクニックは、ゲーム・シナリオの方が得意とするあたりなのかも(中盤以降の設定はこの映画もなかなか巧く出来ていたと思う)。


後半、ばったばったと若者がヤラレ出してからは、徐々にお話のテンションも調子が上がってくるのですが、あとで調べてみたら演出は「ラストサマー 」で知られるベテランのジム・グレスピー監督。この監督、同作品のコメンタリーを聞いてから実はひそかに尊敬してます(何も考えてないような馬鹿作品に見えて、限られた予算や時間の中で実にいろんな工夫に知恵をしぼっているのだ)。


恐怖の一夜が明け、朝日の中で迎えるエンディング、夜のシーンでは不満だらけだったシネマトグラフィーはびっくり見違えるほど良くなり、物語もテンポ良く回り始める。そんなわけで、冒頭はどうなることかと思ったこの作品も、見終わった後はまずまず納得。

まー、好きな人しか見ない類の作品で、しかも決して誉められる事はない類の作品なのでしょうが、(日本ではレンタル直行かな?)、考える所はいろいろある作品でした。


IMDb: Venom
Official Site: Miramax

Venom