国をまたがって活躍してきたベテランの殺し屋アンジェロ(ヤン・デクレイル)は、高齢を理由に組織に引退を求めるが、逆にベルギーでの二人の殺しを頼まれてしまう。
首尾よく最初のターゲットを片付けたものの、二人目が12歳の少女だと知った彼は実行を拒否。殺人依頼の裏に隠れた事の真相を知り、糸を引く大物へと近づこうとするアンジェロ。しかし事の真相を知った彼をやっかいに思う組織と、事件の糸口をつかんだ警察の両方から追われる身となってしまう。しかもそんな彼を蝕んでいたのは、初期のアルツハイマー病だった…


少女売春をきっかけに起こる血なまぐさい真相究明劇を繰り広げるのは、記憶が飛びつつある凄腕のベテラン殺し屋と、ベルギーの司法政界にまで食い込む巨悪、そして熱血漢の若手刑事。監督も役者もベルギー系の人が多く、無知な自分は知ってる名前も顔も見当たりませんでした。(ユニバーサルのインディ系興行子会社フォーカス・フィーチャがリメーク権を買ったんだとか。そのうち見慣れたアメリカの役者さんで再製作されるんでしょう)


ちょっと意外でそれが逆にある意味楽しめたのは、「アルツハイマーの殺し屋」という設定の扱い。劇場予告編を見て、「おぉ、アルツハイマーの殺し屋とは良く考えたもんだ」と感心し、当然このアイデアが核になるお話なのかと待ち受けていると、実は物語はそれとはあまり関係に流れていきます。病気は詳細ディテールの裏づけとして所々に使われる程度で、「これだったら別に主人公がアルツハイマーじゃなくっても成立するお話だよなぁ」と、最後まで見終わって感じたりもしました。それはそれで面白かったわけですが。 (自分はもう少し「メメント 」チックな展開なのかと勝手に想像してました)


ちょっと都合の良すぎる部分もあり、若干とっちらかり気味の箇所も見受けられましたが、丁寧なカットの積み重ねで人物の書き込みに厚みがあり、メロウな部分もドライな部分もメリハリが利いていて、十分うなずいて納得できる出来。似ているようでいて、やっぱりどこか微妙にハリウッドとは違う趣のあるベルギー・オランダ合資映画、ありきたりのアクション・スリラーに飽きた人にはぴったりだと思います。

ちなみに自分が見たのはアメリカ公開版できっちり2時間の編集でしたが、本国ベルギーでは15分長いディレクターズ・カットが公開されたようです。


IMDb: De Zaak Alzheimer
Official Site: Sony Classics
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