20世紀最大の発見をしたと賞される天才数学者のロバート(アンソニー・ホプキンス)がシカゴの自宅で死去した。70年代に活躍した後は統合失調症をわずらいアカデミアから遠ざかっていた彼の最後を見届けたのは、末娘のキャサリン(グウィネス・パルトロウ)だった。父と同じく天才肌の彼女は父から精神病も受けついたのでは?と悩む一方で葬儀のためニューヨークから一時帰郷した姉クレア(ホープ・デイヴィス)の"そつなさ"に対して強く反発を抱く。
一方シカゴ大学の数学科のポスドク学生ハル(ジェイク・ギレンホール)は、ロバートが書き残した膨大なノートの中に未発見の歴史的価値がある資料が紛れているに違いないと家に通いつめていた。やがてキャサリンとハルの仲は急接近するのだが…


デヴィッド・オーバンの戯曲を、彼自身が脚色し、「恋におちたシェイクスピア 」でグウィネスにオスカーをもたらしたジョン・マッデンが演出。グウィネス+マッデンは英国での舞台公演もこなしており、ヒロイン・キャサリンのキャスティングはその経験を通じてマッデンの希望だとか。

出番は思いの他少ないもののアンソニー・ホプキンスは相変わらずの演技力を見せ付けるし、「ワンダーランド駅で 」のホープ・デイヴィスが演じるクレアも実にいい。ジェイク・ギレンホールはやや線が細いものの、芸達者な主役達に肩を並べる好演を見せる。でもやっぱり目立つのはヒロインのグウィネス嬢の巧さだよなぁ。


某掲示板には「good theater does not necessarily translate into good film, and Proof pretty much proves it. 」(いい舞台作品は必ずしもいい映画になるとは限らない。(この作品=)「Proof」はそれを prove (証明)している。)などと書かれていました。自分はこれを舞台原作だと知らずに見て違和感無く楽しめたので、原典既観者を半ばうらやましく半ば可哀想に思ったり。映画版は絵を動かす工夫があちこちにあって、戯曲原作にありがちな舞台臭さは自分には感じませんでした。


統合失調症(=分裂症)の天才数学者と言えば、ラッセル・クロウの「プルーフ・オブ・ライフ 」、じゃなかった「ビューティフル・マインド 」が思い出されますが、ロン・ハワードの明瞭で平易な演出とはやや異なり、本作品にはモチーフの数学に関しても難解さが若干残っていて、その辺に逆に理系心をくすぐられたりも(っても自分は工学部出身で本当の数学科って伝え聞く雰囲気しかわからんのですが)


で、この作品の面白みは、数学というとっつき難い題材を使いながら、普遍的な家族間の憎愛や、男女の微妙な感情の機微を巧みに描き出すという、チグハグさに帰着するような気がします。

キャサリンの父に対する思いも、姉に対する反発も、恋人に対する失望も、媒体である"数学"がうまく機能しつつドラマを先へ先へと回していく構成=脚本の面白さ、ですね。


予算は20億とごく平均的な"低予算"ハリウッド映画ですが、マッデンの演出良し、パルトロウの演技良し、オーバンの脚本良し、と基礎がきっちり通った面白さで見ごたえがありました。お勧めです! (9/29追記 邦題は「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」で来年1月中旬に公開予定だそう)


IMDb: Proof
Official Site: Miramax

Proof