サンフランシスコの病院に勤務する女流外科医エリザベス(リース・ウィザースプーン)は、まじめで熱血漢で潔癖症。プライベートを犠牲にし、患者の命を救うため長時間の激務に耐えてきた彼女は、長い間あこがれてきた部局長への昇進を聞いたその日に自動車事故に遭ってしまう。
時は変わって、最愛の妻を失い失意のデビッド(マーク・ラファロ)は、サンフランシスコのダウンタウンで家具付きアパートを探していた。彼が見つけた掘り出し物の物件は、見晴らしも良く屋上付きで条件は最高。早速月ぎめ契約で引っ越した彼だったが、存在しないハズの元の借主エリザベスが現れて大慌て。
なぜかエリザベスの存在を体感できる唯一の人間デビッドは、過去が思い出せないエリザベスと共に彼女の素性を探る探偵劇を始めるのだが…


アナライズ・ミー 」のピーター・トーランと「フォーチュン・クッキー 」のレスリー・ディクソンの脚本を、「ミーン・ガールズ 」でヒットを飛ばしたマーク・ウォーターズ監督が演出。モニカ・ポッター主演の「恋にあこがれてin NY 」では、さほど巧いとは思わなかったマーク監督でしたが、「フォーチュン・クッキー 」あたりからは、トラディッショナルにきっちり型を付けてくる手堅い演出手法が印象的。本作品も奇抜さは無いものの、過不足なく細やかさが光る作風に好感。


目に付いた他の出演者は、デビッドの親友役にTV コメディで顔を覚えていたドナル・ローグ、エリザベスの姉役でディナ・スパイビー、そしてオカルトに妙に詳しい怪しげな本屋の店員役で「Napoleon Dynamite 」の主演ジョン・へダーなど。


最近すっかり落ち目のメグ・ライアンに変わりラブコメの女王の座を確立しつつあるリース嬢と、オスカーにもっとも近い位置に居るとも称された芸達者のラファロの主演二人が引っ張る、キャラクター・ドリブンのプロットで、とにかく二人の演技の巧さにすっかり釘付け。大人の鑑賞に堪え得る、ちゃんとできたラブコメ映画、という観点からは、かなり高い評価になると思われます。


置かれた状況も性格も正反対の二人が鉢合わせするセットアップの巧妙さや、適度に広げられたサブプロットの幅など、精密に組み立てられた脚本の技巧性はなかなか。でも一方でなぜか物語の加速感と高揚感がなかなか出てこない。どことなく中盤にダルさを感じてしまったのは、あと一歩の脇の演技のベタさのせいなのか? 人間の尊厳死、など重いテーマを含有しつつも表層的なラブコメのから騒ぎに終始する作品のスタイルのせいなのか?うーむ…


終盤に急転回する物語に乗って、キャラクターの味付けをガラリと変えてくるリース嬢の演技の巧さは驚がく的。今後の彼女の更なる活躍を予感させる出来に、ほくほくしながら映画館を出てきました。

予算は58億円、公開第1週で、16億強の興行収入を稼ぎ全米一位。リース嬢の集客力は健在なのを再確認したのでした。


IMDb: Just Like Heaven
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