ホスピスの仕事に疲れたキャロライン(ケイト・ハドソン)は、ニューオリンズの村はずれに在る邸宅でで住み込み看病の仕事を始める。家の主人ベン(ジョン・ハート)は脳梗塞の後遺症から体の自由が利かず、介護士を必要としていたのだ。妻のバイオレット(ジーナ・ローランズ)は仲介する弁護士ルーク(ピータ・サースガード)に「よそ者は家の事は判らない」と乗り気でなかったのだが、ルークの「前任者もすぐ辞めたし、彼女が最後の望みだ」と説得。
古ぼけた屋敷で、幽霊が映るからと家中の鏡を取り外す程迷信深い夫婦の世話を始めるケイトだったが、世話を介してベンが異常に怯え必死に何かを伝えようとしているように思い始め、渡されたマスター・キー(スケルトン・キー)で屋敷を探検し始めるのだが…


低予算で製作され SFX や VFX に金を食われる結果しょぼいキャストになりがちなホラーというジャンルですが、この映画は主要キャラクターはまずまずの実力派を揃える、金をかけた配役。
最近男の子を出産したケイト・ハドソンは、ちょっとだけ肌の露出がありますが、あまりに体のラインが美しいので、てっきり妊娠初期以前に製作されたのかと思っていたら、出産後にダイエットして撮影に望んだらしい(60 lb の減量だって。すげい)。

ジョン・ハートの病気っぷりはリアルだし、ジーナ・ローランズがこんな激しい役をこなせるという意外さが驚き。そして美形の後ろに影が潜むサースガードが今回も独特の雰囲気。各キャラクターにしっかり色づけがされアンサンブルが美しく決まるキャスティングはお見事。


土地に伝わる魔術は信じている人にしか利かない、自分は信じていないのだから何も怖くない、と思っていたキャロラインが、物語の進行に従って徐々に信じ始めてしまい、逆に魔術で自分の身を守ろうとする、というやや技巧的なプロットを、しっかりした演技と演出で自然に流れを出している所は見事。
最初は何も恐れていないヒロインが身を守る術として呪術を使い始め、逆に恐怖を増していく、という流れと動機して、観客も怖がらされる、というパラレルな構造がバックボーンにあるわけです。

物語も技術もマンネリ化している所に、ちょっと目先を変えたり、視覚効果の技巧だけで新しさを出そうとするような、力技の金太郎飴的なホラー映画が量産されている中で、工夫された創造努力の新鮮さに好感が持てます。


血しぶきを散らしたり、首がすっぱり飛ぶようなショッカー系ではなく、たっぷり尺を取ったセットアップで、じわじわ恐怖を盛り上げる地味系のホラー、狙いは面白く、肉付けもちゃんと機能していたと思います。
予告編でも涙でマスカラを流しながら「自分は信じないから」と連呼するキャロラインの恐怖を、そのまま体感できる、ちょっと凝った構成のホラー映画。2時間たっぷり怖がって楽しんできました。


IMDb: The Skeleton Key
Official Site: Universal

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