大学を出たばかりの新卒アンディ(アン・ハサウェイ)はジャーナリスト志望。学生新聞の編集長を経験し、夢はザ・ニューヨーカーで記事を書くこと。しかし田舎出身の女子学生に門戸を開く出版社は皆無で、唯一返答があったのはファッション・マガジンの「ランウェイ」誌。その仕事とは業界一の切れ者でかつ鬼のように厳しい編集長ミランダ(メリル・ストリープ)のパーソナル・アシスタント。
彼女は軽いツナギのつもりで面接に望んだのだが、なぜか業界知識も無くファッション・センスも無い彼女が他の応募者を差し置いて合格。第一アシスタントのエミリー(エミリー・ブラント)もはじめとしてモデルのように細い体に最新ファッションにまとった編集部の誰もが、田舎者丸出しでファッションのファの字も知らないアンディにはその仕事が勤まるとは思っていなかったのだが...


ローレン・ワイズバーガーの自伝的小説「プラダを着た悪魔」を、「Laws of Attraction 」や「Three to Tango 」のアライン・ブロッシュ・マッケンナが脚色した、ファッション雑誌での初仕事に振り回される新人社員のコメディ・ドラマ。演出は「セックス・アンド・ザ・シティ 」などの HBO 系プレミアムTVドラマで知られるデヴィッド・フランケル監督。


この作品、最初にポスターを見た時には「なんか変なタイトル」くらいにしか気に留めなかったのですが、劇場で流されているトレイラー(予告編)がとにかくすばらしく、長い間大変楽しみに公開を待っていたのでした( Apple のトレイラー・サイトは「ここ 」から)

主人公を演じるアン・ハサウェイは「プリティ・プリンセス 」時代から明るく健全なお子様映画への出演が印象に強く、シリアスな役がこなせるのか疑問に思うスタッフも多かったのが、そんな先入観を吹き飛ばしたのが「ブロークバック・マウンテン 」での演技だったそう。本作では、流れに押し流される若さを元気に明るく演じています。あえてパーソナリティを奥に引っこめた受け身のニュートラルな演技と演出が、観客の感情移入を助けているような印象。


そして、そんな彼女の前に立ちはだかる偉大な女優編集長ミランダを演じるのは、合計13回のオスカー・ノミネートを誇るメリル・ストリープ(原作小説では、ミランダは Vogue 誌のアナ・ウィンター編集長をベースに造形されているらしいですが、実際どんな人なんでしょう??)。先日観たばかりの「A Prairie Home Companion 」とはがらりと違う、すばらしいキャラクター造形に14回目のノミネートの予感!


この他の出演者は、同棲中のボーイフレンドとして「ニコルに夢中 」でメリッサ・ジョーン・ハートと共演したエイドリアン・グレニアー、親友役で「RENT/レント 」のトレイシー・トムズ、親切にしつつも彼女を密かに狙うハンサムなライターでサイモン・ベイカー、そしてランウェイ誌のファッション・ディレクター役に天才スタンリー・トゥッチなど。


TV ドラマ出身監督の采配のせいか、ボルテージの上げ下げが普通の2時間映画と比べてやや違和感があった点を除けば、脚本、演技、演出、編集すべてが高水準で文句無しにすばらしい。
特筆すべきは物語の語り手(カメラ)の距離感の保ち方で、主人公の第一視点に近づき過ぎず遠ざかり過ぎない微妙な間がなんとも絶妙。


新人が足がかりを作るために必死に努力する様や、微妙な局面でモノを言う社内政治力など、米国企業に勤務経験がある人なら、だれもが「うんうん」と肯けるリアリティを、きちんとドラマに仕上げた脚本も凄いですが(下手すると「うちの上司は嫌な奴で」で終わってしまうかも)、あえてカタログ映画に仕立てなかった監督の英断と力量もすごい。


スーパーモデルや有名デザイナーが本人役で出演しているので、ファッションに詳しい人はより楽しめると思いますが、そうでない人でも十分すぎるほど面白かった作品。テーマが年齢的に一番ハマりやすい層だという点は差し引いて考えなくてはならなかもしれませんが、自分は今年観た作品では本作が一番です。ご近所の映画館でかかっていたら、ぜひ。


IMDb: The Devil Wears Prada
Official Site: Fox 2000 Pictures

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The Devil Wares Prada