スーパーマン(ブランドン・ラウス)が姿を消してから5年以上が経っていた。そんなある日、とうもろこし畑の広がるスモールヴィルに再びスーパーマンを載せた隕石が落下。息子クラーク・ケントとして彼を育てたマーサ(エヴァ・マリー・セイント)は、彼の再訪をやさしく受け止めるのだった。
メトロポリスへと上京し、再びデイリー・プラネット新聞社へと出社する彼が目にしたのは、最愛のロイス・レーン(ケイト・ボスワース)の書いた「なぜ地球はスーパーマンを必要としないのか?」という記事。その記事はピューリツァ賞を受賞しており、しかも彼女は花形記者のリチャード(ジェームズ・マースデン)と結婚。ジェイソンという男の子を授かっていた。

一方、スーパーマンによって捕らえられ投獄されたレックス・ルーサー(ケヴィン・スペイシー)は既に出所。愛人のキティー(パーカー・ポージー)を使って大富豪の未亡人から遺産をせしめ、再び世界征服の野望を追い始めるのだが…




今更改めて説明するまでもない、「スーパーマン 」フランチャイズの最新作。お話的には「スーパーマン II/冒険篇 」の続きという設定で、「スーパーマン III/電子の要塞 」や「スーパーマン4/最強の敵 」は無かった事にされている!?


この作品、構想から公開まで19年、途中監督が4回も交代した超難産型の製作だったらしい。2004年の初夏に、最終的にディレクターとして作品を仕上げたブライアン・シンガー監督に話が回ってきた時には、既にWB内部で11年の歳月と65億円の準備費が費やされていたと言う。
ブライアン・シンガーは、既存のキャスティングを反故し脚本を全面改訂、制作費185億の約束を取り付け製作着手。途中予算を20億削るために、フル・セットが組まれる予定だったメトロポリスがCGIに変更(←設定はNYCかと思っていたんですが、実際には架空の都市、らしいです)。しかしCGIやらに追加のコストがかかり結局制作費は204億円にまで膨らんだんだとか。この制作費に、税金やら事前の準備費用やらを足していくと、製作総予算は263億。これに全世界向け広告宣伝費を約100億投じ、結果配給会社WBが負担する総コストは363億円。これを回収し収支をプラスに転じるには全世界で600億の売り上げが必要なんだそうな。


意外なのは、予想に反してこの新作は何から何まで予想通りだった事。今この時期にリメークするんだから音楽なり脚本なり演出に何か新しい"今風"のエレメントを入れてくるかと思ったのですが、いい意味でも悪い意味でもきわめて普通の万人が抱くだろう平均的イメージをなぞった"スーパーマン"映画でした。


サントラもジョン・ウィリアムズのオリジナルから大きくアレンジを変えず、穏やかなバリエーションの差異しかみせず、クレジットも懐古調。それでいて今の若い世代がイメージするだろう人気TVシリーズ「ヤング・スーパーマン 」との連続性も保っているのは、老若男女すべてに万遍無く受け入れられようとする配慮なのか?


ブルークラッシュ 」や「アイドルとデートする方法 」の印象が強かったケイト・ボスワースがロイス、って少し違うかなぁ、と見る前に想像していたのですが、この作品で彼女はキャサリーン・ヘップバーンの演技を研究して真似たとかで、ちょっと古風で落ち着いた印象。
実生活は不器用でケントに近いというブランドン・ラウス君(実際に黒ぶち眼鏡をかけてるんだとか)は、スーパーマンらしく見えるために立ち方、姿勢を強制したとかで、やっぱりどことなくクリストファー・リーヴ風。

ケヴィン・スペイシーやパーカー・ポージーは持ち味を生かした演技で安定感がありましたが、やや驚いた配役はロイスの旦那役ジェームズ・マースデン。つい先日、「X-MEN ファイナル ディシジョン 」でひたすらかわいそうなスコット(サイクロプス)を見たばっかりなので、まったく違うキャラがダブってなんとなくムズムズしました。


どこかにブライアン・シンガー監督ならではオリジナリティーを期待していた部分もあったのですが、まぁ考えてみればあまりコンテンポラリなスーパーマンってのも変なわけで、これはこれで良かったのかもしれません(噂ではオリジナルの脚本には9/11以降のテロに悩まされる世界、のようなモチーフも入っていたそうです)。ブライアン監督曰く「今まで自分の撮った映画の中で一番へテロセクシャルな映画(笑)」だそうですが、たしかに父性を中心にすえた"健全"なテーマの作品で、子供連れでも安心、みたいな所を狙っているのかも。


2時間半を越す長尺で、最初と最後はややスロー・テンポですが、とにかく美しいシネマトグラフィーで
やっぱり映画館で見ておきたい作品だと思いました。邦題はそのまま「スーパーマン リターンズ」で8月19日より公開だそうです。


IMDb: Superman Returns
Official Site: Warner Bros.


Superman1

Superman2


Superman Returns