マイケル(アダム・サンドラー)は新進気鋭のアーキテクト。事務所の社長(デヴィッド・ハッセルホフ)に気に入られ、次々と主要プロジェクトで斬新なデザインを考案していくのだが、問題は仕事と家庭との両立。押しの強い社長は無茶なスケジュールで次々とプロジェクトを押し込んでくるが、妻のドナ(ケイト・ベッキンセイル)は子供達と過ごす時間が少ない事を常に不満に思っていた。
そんなある日、仕事と家族サービスに翻弄されるお父さん役に付かれきったマイケルは、リビングに多数あるリモコンの操作にいらだち、夜中にもかかわらず車でユニバーサル・リモコンを買いに走る。
1台で何の操作にも使える学習型リモコンが欲しかった彼に、怪しげな店員モーティー(クリストファー・ウォーケン)が店の奥から引っ張り出してきたのは、本当に何でも(ユニバーサルに)を時間を操作できる万能のリモコン。自分の過去の任意の地点まで戻ってプレイバックができれば、面倒で退屈な時間は早送りして未来にも行けるのだ。「返品は不可能」というモーティーの警告も気づかず、マイケルは万能リモコンの威力に惚れ込み理想の生活を手に入れたかに思えたのだが…



アダム・サンドラーの Happy Madison Productions が製作した、コメディ色の強いファンタジー・ドラマで、演出は過去「ウェディング・シンガー 」や「ウォーターボーイ 」などのヒット・コメディでもサンドラーと仕事をしたフランク・コラチ監督。脚本は「ブルース・オールマイティ 」を手がけたスティーヴ・コーレンとマーク・オキーフのコンビ。そう言えば、神から万能の力を与えられた平凡な男が、その力に翻弄されるという「ブルース…」と、テーマが被る部分は少なくないのかも? (ちなみに「ブルース…」の続編「Evan Almighty 」はスティーヴ・カレル主演でもうすぐ公開)


アダム・サンドラーの主演映画は、やっぱり全てが彼の方向を向いたアダム・サンドラーの映画なわけですが、脇役に前述のデヴィッド・ハッセルホフ、ベッキンセイル、ウォーケンとアクの強い三人を置き、ヘンリー・ウィンクラー、ジュリー・カヴナー (「ザ・シンプソンズ 」のマギー役の声優さんですね)、ショーン・アスティン、ジェニファー・クーリッジなど、個性と実力を備えた役者を配置した強力なキャスト。無名(自分が知らないだけか?)ながら子役7歳から20台後半までを3人づつで演じた子役(?)も上手かったと思います。


最近のアダム・サンドラーの出演作の傾向通り、この作品も単なるドタバタ・コメディではなく、むしろ仕事と家庭のバランスを見失った父親の半生を軸にしたヒューマン・ドラマ仕立て。所々にサンドラーお得意の毒を含んだギャグも挟まるものの、映画の本筋はしっとりと重い内省的な物語だと思います。

先日ここでも書いた「RV 」は、ロビン・ウィリアムズが仕事と家庭サービスのサンドイッチになるどたばたコメディでしたが、似たテーマの作品がこれだけ近い時期に公開されるという事は、ある意味米国の社会的側面を反映しているテーマなのかもしれません。


笑いを誘うギャグは鋭く、しんみりさせるシーンも丁寧な演出で、いい意味でお話は"お約束"の流れにしっかり乗って進行していく作品。滞留するほどは遅すぎず、乗り遅れるほど急ぎすぎない編集の妙もあって、個人的には十分すぎるほど楽しんだ作品です。


ネットでは制作費70億とも83億と伝えられる規模の作品ですが、この週末に全米1位でボックス・オフィス・チャートに初登場。公開スクリーン3750枚弱で売り上げ40億の成績は、相変わらずのアダム・サンドラーの求心力の強さを印象づけました。

伝統的にハリウッド発のコメディーは海外興行に弱い、と言われています(アダム・サンドラーも日本での知名度・信頼度はイマイチ)、「クリック」というノイズの載りやすいキーワードのせいもあってか、邦題、日本での公開時期は探しきれませんでしたが、日本人なら思わずニヤりとするようなギャグもあって(商談途中、どうせアメリカ人にはわかるまいと日本語でボロボロの悪口を言う出張ビジネスマン達の会話を、マイケルはリモコンで「英語」吹き替えにして内容を把握してしまう...)、日本でもまずまず評判になりそうな予感もするのですが、さて...


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