生まれた時から顔におおきなアザがあるジェイコブは、内気で内向的。一方双子の兄のルーディーは、やんちゃで活発。弟に絡むいじめっ子達に立ち向かう勇気と男気を見せる。二人の親友は、家族一同で太っているガスと、シングル・マザーの母親から十分に愛情を受けられない不満を感じているおませな女の子のマリー。 4人のお気に入りの場所は、裏庭の林の中にあるツリー・ハウス。いじめっ子達の手が届かない
その場所は、顔を恥じるジェイコブにとってとびきり特別な場所でもあった。
そんなある夜、部屋を抜け出した兄のルーディーとガスは二人でツリー・ハウスに寝泊りしていたのだが、そうとは知らぬいじめっ子は緊急避難場所として彼らがいつも逃げ込む憎憎しいこの場所に自作の火炎瓶を投げ込む。寝入っていたルーディーは焼死。なんとか逃げ出したガスも落下のショックで味覚と嗅覚を失い、食べる事が趣味な家族から浮いて行く。一方マリーは一方的な片思いから工事現場で働く若い男に付きまとうのだが…




その衝撃的な内容から2001年のサンダンス映画祭で大きな反響を呼んだ「L.I.E. 」の脚本アンソニー・チプリアーノとマイケル・クエスタ監督のコンビが再びタッグを組んだ、ダーク・ドラマ。製作予算は4千万で、米国での配給はインディ映画をケーブルに流す専用チャンネルの IFC。


常に自分の味方で真に心を許せた兄を失ったいじめられっ子の弟、食べる事だけが生きがいの家族の中で味も匂いも感じないため孤立する太っちょの子供、親からの愛に飢え家から出て行った父親を投影するかのように工事現場作業員に恋をする小学生女子、の12歳三人が主要キャラクター。その3人の書き込みは厚みがあり、引き込まれました。物語のセットアップがとにかくうまくて、その後の展開も、週末の落とし所も十分に考えられた知的な作品であります。


子供のアンバランスな利発さとおろかさや愛らしさと残酷さの共存を、よく整理・構成された秀逸な脚本で描くちょっと反社会的な匂いもする作風。演出も編集も、共に脚本の持つポテンシャルを100%引き出した見事な仕上がりで、これといった不満な点は見当たらないわけですが、一方で作品スケールの小ささと狭さは否定しがたい。面白く良くできた映画だとは思うのですが、いい意味でも悪い意味でも丁寧に小器用にまとめられたインディという枠は超えられなかったかも。


大人の知らない所で子供達がとんでもない事になっている、という点では邦画の「誰も知らない 」に通じる所もあるわけですが、本作は時に過剰、時に疎遠すぎる子供と大人の接合部を描いた点でユニークだった気がします。


日本の大手劇場チェーンでかかる可能性は低そうですが、広告宣伝から受ける印象よりずっと濃い内容で仕上がりも十分に磨き上げられた作品なので、ご覧になるチャンスがあったらぜひ。


IMDb: Twelve and Holding
Official Site: IFC Films

Twelve and Holding